こんにちは

 

暑い日が続いていますね。

さて今回は、「かたち」についてお話ししようと思います。

 

毎回金継ぎと絡めてお話ししてきましたが、今回のお話は直接的な関連はありません。ご了承の上お読みください。

 

私がお教室でよく生徒さんに言っている言葉に

「丸いものは丸く、器のかたちに合わせて仕上げましょう」

というのがあります。

 

金継ぎの作業は、欠損した「かたち」を作ること。残っている器の肌から、途切れた器の線の延長を描くようなことです。

 

金継ぎのような小さな面積に対する作業で、かつ、使う道具が小さいとどうしても肩に力が入ります。一生懸命集中すると、「作業すること」が目的になってしまって本来の「かたち」から離れてしまうことがあります。なので、上記の言葉を口酸っぱく生徒さんに言って回っています。

 

今回は捉えどころのない「かたち」について考えるきっかけになった展示についてご紹介します。

 

5/25~8/4まで大阪の国立国際美術館で「ジャコメッティとⅠ」が開催されていました。アルベルト・ジャコメッティのブロンズ彫刻「ヤナイハラⅠ」を新たに収蔵品として迎えたことを記念して企画された展示です。

 

個人的なことを言うと、彫刻が好きなのです。工芸を専門として勉強している身であり、工芸の「用としての美」のある姿に魅せられている反面、「かたち」を追求する彫刻世界の純粋さや潔さに憧れる気持ちもあります。

 

ある意味、見たままをかたちに起こすことはある程度の訓練を積めば出来るようになると思います。そこから芸術としての「かたち」に昇華していくのは努力+αの世界になってくると思います。

今回のジャコメッティの展示にはその+αの世界、「ヤナイハラⅠ」のモデルになった哲学者・矢内原伊作氏との関係性や彫刻完成までのプロセスが展示されていました。

 

実際に目にされた方は本人に似ていないじゃないかとおっしゃるでしょう。矢内原氏本人を姿として捉えたかたちでは無いからですね。彫刻とは作者がモデルを通して見つけた世界を「かたち」に起こしたものとも言えます。

 

スケッチブック、カフェの紙ナプキン、広告の余白・・・ジャコメッティは時間さえあれば矢内原氏をスケッチしていました。詳細なスケッチからデフェルメされた顔、何枚も何枚も何枚も描いて矢内原氏から「かたち」を見つけようとしていく。

「かたち」とは明らかのようで、捉えどころのないもの。息の詰まるような、孤独な、でもどこかわくわくとする高揚感も感じさせるプロセスは観ていてとても面白かったです。

展示室の「ヤナイハラⅠ」に対峙した時はこれがジャコメッティの発見した矢内原氏の「かたち」なのだなと、技巧的な上手さの先にある純粋な表現の世界、あらためて彫刻の不思議な世界に魅了されました。

 

ジャコメッティのミューズの一人であった矢内原氏の彫像「ヤナイハラⅠ」は、嬉しいことに8/27~12/8まで同じく国立国際美術館で企画展「ジャコメッティⅡ」で観ることが出来ます。企画展Ⅰとはまた違った展示構成になるようですので楽しみです。機会がありましたらぜひ行ってみてください。

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