お店番スタッフおーた企画の第6回目のその3です。
前回までの記事を読まれた方が影響を受けて靴磨きしてみたり、眠らせていた革靴を引っ張り出したりと大変よきな感想をちらほらと。
いよいよ靴磨きの回です。
革靴についての愛が止まらない、おじさん2人の偏愛トーーク。
どうぞ、よろしくお願いいたします。(店主)
お店番おーたと主夫さいとうが交わす、趣佳とはほとんど関係のない話を不定期にお届けします。
暮らしにまつわる話が中心なので、全く関係がないわけでもない(という願いも込めて)ということで「の、むこう。」という名前にしました。
おーたの「これ、どうなんでしょう?」という大して意味もない質問に、家事好きさいとうが無駄に真剣に語ります。真剣ではありますが、趣佳のことはあまり念頭にありません。
さいとうは家事好きですが、別にカリスマでもスーパーでもないので、これを読んで人生が変わることも、運が向いてくることもないと思います。
多分。
第6回 靴と歩む その3 靴を磨く
その2「靴を選ぶ」では趣佳オススメの靴を紹介しました。
その3「靴を磨く」の主人公は僕です。なにせ一時は生業としていたくらいですから。
趣旨がちょっと…。
でも、ぜひ教えてください。
僕の靴磨きは、シューキーパーを靴にセットして靴のシワを伸ばすところから始まります。
それから毛先の長い馬毛の柔らかいブラシでホコリを取り除きます。
次に靴専用のクリーナーをネルコットンの布に薄く付けて前回の靴クリームやワックスを取り除きます。
化粧落としの感覚ですね(お化粧したことはないですが) 。
靴磨き、と簡単に言いますが、まずはホコリ取り、化粧落としから始まるんですね。
ぼくは道具が気になってしまう性格で、磨きに取り掛かる前の段階で、シューキーパー、馬毛のブラシ、靴専用のクリーナー、ネルコットンの布が登場しています。
シューキーパー、馬毛のブラシは持っていましたが、クリーナーは使ったことはないですし、拭くのは着古したTシャツを切ったものでした。
それじゃあ、ダメなんですか?
色付きのシュークリームで靴を手入れしているならクリーナーでリセットしたほうがいいですね。
重ね塗りがどんどん進んで革が空気に触れない状態になってきますし、そもそも外で履いて汚れているでしょうから。
クリーナーがない場合は水で湿らせてかたく絞った布でざっと拭くだけでも随分いいと思います。
その場合ベチャベチャにならないようにしないことが重要です。乾拭きもしたほうがいいですね。
布は着古したTシャツでも大丈夫です。
続いて化粧を落としてからの手入れを教えてください。
化粧を落としたら、その後ペネトレイトブラシ(シェービングフォームを泡立てるブラシの形に似た小さいブラシ。豚毛です)に靴クリームを付けて靴に塗り込んで行きます。
薄く塗り込めたら次は毛先の短い硬い豚毛のブラシを使って高速でブラッシングしながら馴染ませていきます。
(文字で雰囲気を表現しにくいのですが、人が見てたら見せ場その1です)
馴染んだらネルコットンの布でから拭きして余分についた靴クリームを取り除きます。
その後馬毛のブラシでこすって艶を出します。馬毛のブラシですが、ホコリを取ったブラシとは別のものです。
通常の手入れであれば、ここまでで十分です。
そこまででまだ通常の手入れですか。
まずは道具の整理をします。豚毛のペネトレイトブラシ、豚毛のブラッシングブラシ、ネルコットン、ホコリ取りとは別の馬毛のブラシが必要です。
高速ブラッシングは、直線的にブラシを動かすのですか、それとも円を描くように?
僕の場合は右手でブラシを持って直線的に動かしますね。
左手に持った靴を動かしてブラシの当たる位置を変更します。
ずっと気になっていたのですが、ネルコットンは繰り返し使ってもいいものなのですか?一足の靴を磨くのに、どれくらい使うものなのでしょう。
ネルコットンの一生が知りたいです。
ネルコットンは仕事で使っていたときは洗って何度も使っていました。
大きいサイズで買ってきて切って使うんですけど、普通のハサミではなかなか切りにくいんです。
切る作業は嫌いでした^^
使って洗ってを繰り返しますとやはり繊維が細くなってきてフワっとした感触じゃなくなります。
固くなる感じなんです。
そうなってきたらお役御免ですが、人によってはそこからも結構使いますね。
まあ僕は早めに新しいのを使いますけども^^;
ネルコットン以外に、ブラシだけでも馬毛2本、豚毛2本、シューキーパー、クリーナー、靴クリームが必要です。
おーたさんは、これを道具箱のような専用スペースにまとめていたのでしょうか。
ブラシは大まかな色ごとに使い分けてたり(ペネトレイトブラシは色ごとに使い分けてます)、クリームや他の道具もたくさんありますのでかなり大きめの工具箱を使っています。
スタンレーのステンレスのツールボックスじゃあないですか。
ブラシの数もクリームの数もぼくの想像をはるかに上回っています。
だからこそ、おーたさんの靴磨きはここで終わらないんですね。
はい。
個人的嗜好でワックスをつま先とかかとに塗り込んで行きます。
それが、いわゆる個人的嗜好としての鏡面仕上げですか。
そうです。
鏡面仕上げをするにはまあまあのコツが要ります(見せ場その2です)。
僕は自分所有のビジネスシューズからワークブーツまでの表革の靴全てにこの工程をしておりました。
鏡面仕上げには1足どの程度の時間がかかるのでしょう。
鏡面仕上げも靴の種類によってハードに仕上げるものとさらっと仕上げるものがあります。さらっと仕上げるパターンで僕は片方10分はかかります。
鏡面仕上げの行為自体が好きなので時間があったらいくらでも時間かけてやっちゃいます。
鏡面仕上げはさらっとでも一足20分!夏場は汗だくになりそうです。
おーたさんがその時持っていた靴の数、一足の磨きにかかる時間、磨く頻度はどの程度でしたか。
それらを掛け合わせるとおーたさんが靴磨きにどれ程人生をかけていたかがわかるというものです。
手入れをする靴って事で考えたら15足くらいだったでしょうか。
磨くときは3〜5足をまとめて手入れするので2〜3時間はかかってました。
まとめてするといろいろ省略できることもありますが、1足なら1時間弱はかかるでしょうね。
靴好き、手入れ好きですね。
今では当時履いてたブーツは2、3足しか残ってませんし、鏡面仕上げも取りました。
まさかこんなにスニーカーしか履かないようになるとは夢にも思いませんでした。
こう見えても趣佳のお店番は大変なんです。
いやー、鏡面仕上げのJMウェストンからスニーカーオンリーへと随分カジュアルになってきました。
この夏なんて雪駄履いてましたしね。
夏場はあれが楽です。
ところで、鉄のフライパンと同様、さいとうさんの靴の手入れにもコツがあるのではないかと思います。
ようやく出番が回ってきました。
靴と歩む上でぼくが何より大切だと思っているのは手入れです。
おーたさんの靴選びの基準も「修理に出しても恥ずかしくないもの」でした。
いい靴を履いていても、手入れがされていなければ足元を見られます。
どうもさいとうさんの話を聞いていると、常に手入れの方に関心が向いていくように思います。
スニーカーを履き潰していく感覚には馴染めません。テフロンのフライパンを使い捨てする罪悪感と同じような気持ちを味わいます。
革の靴はスニーカーに比べると高いですが、でもちゃんと手入れをしていれば長く履くことができるので、結局随分と安い買い物になります。
おーたさんも言うように、革靴の手入れは楽しいです。せっかくですので、ぼくも革靴の手入れについて語ります。
さいとうの語り:革靴の手入れについて語ります。
その1「靴を履く」で語った4足の靴の革は今でも綺麗な状態です。
先日ルームシューズを買おうと思って20年物のブーツを履いて靴屋に行ったら、若い女性の店員さんに聞かれました。
「そのブーツは何年くらい履いているのですか?」
「20年です」
「綺麗に履いてますね」
この歳になると年下の女性に褒めてもらうこと自体がすでに嬉しいものです。
「あなたの年と同じくらいです」
にっこり微笑んで、この程度の返しをできる人間になりたかったです。
ちょっとした寂しさと後悔を感じるのはむしろこういう時なのかもしれません。
逸脱しました。
毎日履くのはつっかけタイプのもので、他の3足は滅多に履くことはありません。だから傷みも少なくて当然なのですが、ビジネスシューズを毎日履いていた頃から手入れは怠りませんでした。
ぼくは靴用のブラシを2本持っていて、1本はホコリ落とし専用、もう1本はトリートメント剤を塗った時のフィニッシュ用です。
帰宅したらまずホコリを落とし、そしてフィニッシュ用のブラシで拭きます。フィニッシュ用のブラシにはトリートメント剤が染みているので、普段の手入れはこれで十分だと思います。
履くときも同様に、ホコリ落とし用、フィニッシュ用でささっとブラシをかけます。
基本的にはこれだけです。
大切なのは、最初にホコリを落とす、ということで、これをしないと靴についたホコリで革を傷つけてしまいます。
誇りは持ち続けるべきですが、埃はさっさと落とした方がいいです。
定期的な手入れとしては、色付きの靴墨(というのは古い言葉ですか?)を使うこともなく、ラナパーという皮革専用のトリートメント剤をせいぜい月に1度塗るだけです。
今ではビジネスシューズは靴箱に入ったままですが、履いていた当時は、毎週末靴磨きをしていた記憶があります。ぼく自身が他人の足元を見る癖があるので、これはもう当然といえば当然です。
登山とツーリングの合間に靴磨きをしていた自分を少し胡散臭く感じないでもないです。
一体どうやって時間を作っていたのでしょう。
ともあれ、それだからこそ靴さえちゃんと磨いてあれば、多少酒臭くても、それで安心、という気持ちでした。
迷惑ですね。
手入れを日常的にしていると靴の状態の変化にも敏感になります。靴底のへたり具合とか、靴紐の傷み具合とか、犬の〇〇がこびりついているとか。
旅行中にパートナーが履いていた靴の靴底の縫い糸が切れてしまったことがあって、代わりになる靴を随分と探し回ったことがあります。緊急時とはいえ靴との付き合いは長くなるので、妥協はしたくありませんでした。
そんな羽目に陥らないようにも、日常的に靴の手入れをするのは大切なことです。
「手入れとは、手を入れられないところに手を入れることなり」という言葉にぼくは肯きます。
フライパンの手入れと同じ印象を受けました。
毎回毎回の手入れはとても軽いのですが、軽くすることで続けやすくし、続けることでいい状態を維持しているような気がします。
ありがとうございます。続けることは大切なことだと思います。
ということで、
待ってください。まだ大切なコーナーが残っています。
靴磨きのあとにはヘトヘトになります。そんなときにお気に入りのグラスでビールがたまりません!おすすめは、花岡央さんのビアグラス。涼しげなブルーがほどよくクールダウンさせてくれます。
宣伝ですか。
いえいえいえいえ!本心です。
でもちょっと無理くりだったかなぁ…。
あ!お酒を飲まない方にはコーヒーマグもおすすめです!
お気に入りのうつわで飲むコーヒーは格別です!
しっかり宣伝しましたね。
何事も続けることは大切なことだと思います。
ということで、本当に、
タイトルイラスト:小林あつ子
https://atsukokobayashi.tumblr.com/