暮らしの道具、夏の台所

お店番スタッフおーた企画の第4回目です。
今回は7月31日よりスタートの「暮らしの道具展」の告知記事ですが、さすがにそれだけには止まりません。さいとうさんの道具愛が炸裂。
家事と道具についてのおじさん2人のゆるトーーク。
どうぞ、よろしくお願いいたします。(店主)

 

お店番おーたと主夫さいとうが交わす、趣佳とはほとんど関係のない話を不定期にお届けします。

暮らしにまつわる話が中心なので、全く関係がないわけでもない(という願いも込めて)ということで「の、むこう。」という名前にしました。

おーたの「これ、どうなんでしょう?」という大して意味もない質問に、家事好きさいとうが無駄に真剣に語ります。真剣ではありますが、趣佳のことはあまり念頭にありません。

さいとうは家事好きですが、別にカリスマでもスーパーでもないので、これを読んで人生が変わることも、運が向いてくることもないと思います。
多分。

 

第4回 暮らしの道具、夏の台所

素麺 暮らしの道具

おーたさん

趣佳では今度『暮らしの道具展』を開催します。
さいとうさんにはこれまで、たわし、鉄のフライパン、グリルについて話をしてもらいましたが、道具については色々とうるさそう、失礼、ご意見をお持ちのようです。
今回は道具全般について聞きたいと思います。
さいとうさん、暮らしの道具ってどうなんでしょう。

さいとうさん

「弘法筆を選ばず」ということわざがありますが、ぼくは嘘だと思います。
むしろ、道具が仕事の質を規定することの方が多いのではないかと思います。

おーたさん

道具選びは大切ですね。

さいとうさん

賛成です。
でも、適切な道具を選択するためには、その仕事の内容を熟知していなければならないと思います。
道具それ自体は使い方を教えてくれません。道具を適切に使うためには、知恵が要求されます。

おーたさん

やはり前置きが長くなってしまいました。
今回はどんな話を聞かせてもらえるのでしょう。

さいとうさん

暮らしの道具、と言っても衣食住に春夏秋冬を掛け合わせただけで12通りです。全て網羅するのは不可能なので、今回は「夏の食」に絞り込んで、「素麺」にまつわる道具について語ります。
素麺は我が家の夏の朝食です。
意外に思われるかもしれませんが、素麺一つ作るにも実にいろんな道具が必要になってくるのです。

さいとうの語り:素麺について語ります

一番お手軽なのは、コンビニエンスストアで売っているつゆと薬味つきの素麺を割り箸で食べるという選択でしょうか。
市販の麺つゆは使うけれど、素麺は自分で茹でる、つゆも自分で作る、しかも毎回作る、鰹節も削る、とだんだん手間がかかっていきます。

我が家の立ち位置は、素麺は自分で茹で、つゆはしょう油とみりんを煮切ったものを常備しておいて、都度だしで割って麺つゆを作る、というところで、上から4番目くらいの手間ではないかと思います。
でも、決して手間とは思わずに毎朝作っています。

作る手順に沿って、道具の観点から整理しました。

・ガラスの保存瓶
だしは昆布と煮干しを水出しで使っています。昆布と煮干しは別々にガラスの保存瓶に入れています。密閉性があるのと、残量が見えるので重宝しています。
一から始めるならジップロックでも、タッパウェアでもいいと思います。志があるならばまず始めることが肝心です。一歩を踏み出さない限り、どこにも行くことはできません。
スモールスタートで行きましょう。

だしの素 暮らしの道具

・だし用容器
水1リットルに対して、昆布と煮干しを10gずつ入れ、冷蔵庫で一晩浸水させます。
これには容量1,200ccの琺瑯製の容器を使っています。2本で回していて、抽出できたらもう一本に移し、もう1回水を注いで2番だしまで引きます。

・小鍋、ボール
しょう油とみりんを煮切ります。
径16cm、容量1,200ccの小鍋を使い、煮切ったら水を張ったボールに浮かべて粗熱をとります。こうすると香りが飛びにくいです。
小鍋でなくても、ステンレス製のボールがあれば加熱できるので、それでいいです。水に浮かべる時も安心です。

・煮切りしょう油とみりんの保存瓶
しょう油とみりんを200ccずつ混ぜ小鍋で煮切り、ガラスの保存瓶に入れて冷蔵しておきます。
麺つゆとして使うときは、4倍のだしで割ります。

・素麺保存用瓶
素麺は食べ切らない分をガラス製の保存瓶に入れています。パスタ用の瓶の流用です。
最初はジップロック、続いて琺瑯製容器に寝かせて保存、そしてここに至ります。
パスタ以外に、大豆、春雨なんかもこの瓶を使っています。

乾麺 暮らしの道具

・雪平鍋、菜箸
素麺を茹でます。
我が家では素麺は二人で4把食べていて、径22cmの雪平鍋に水を1,500cc沸かして茹でています。
固めが好みなので、沸いたらすぐに火から下ろして流水で締めます。

ちなみに我が家ではパスタを二つに折って茹でるので、このサイズの雪平鍋があれば3人前240gは余裕です。理想の水分量に比べれば少ないですが、大きな寸胴鍋を持て余すよりはこれでなんとかしましょう。
パスタは二つに折るとお箸でも食べやすいので重宝します。

・ざる、ボール
ボールにざるを乗せ、行平鍋からお湯ごと素麺を移し、湯を切ります。手間ですが、ボールのお湯は雪平鍋に戻します。我が家の排水管は金属ではないのでこうしています。雪平鍋のお湯は洗い物の予洗いに使います。
ボールに水を張り、ざるごと素麺をつけて締めます。

・竹製ざる、皿
我が家ではお料理は大皿に盛り付け、各人自分で欲しいだけ食べるというスタイルなので、素麺も径24cmの竹製ざるに盛り(この時、少量ずつ山を作ります)、ざるが丁度乗る少し深みのある皿に乗せて供します。

・メジャーカップ、蕎麦猪口、お箸、箸置き
メジャーカップに、煮切りしょう油とみりん50cc、だし200ccが二人分1食の麺つゆになります。これを各人の蕎麦猪口に注ぎ分けます。

お箸には箸置きが欠かせません。箸置きがないと不安になるくらいです。
お箸の持ち方については色々言われますが、ぼくはむしろ箸置きからお箸を持ち上げる所作、戻す所作を見てしまいます。その所作が美しいと、もうそれだけで好感度急上昇です。

・たわし
竹製のざるを洗うにはたわし、です。

このように、ただ素麺を食べるだけでも20近いアイテム数になりました。大変なものです。
でも、ここに挙げた道具たちは、夏に素麺を食べるためだけに存在しているわけではありません。色んな使い回しを経て今の役割を担っているだけで、これだけでは語りきれない歴戦のツワモノ達です。竹製のざるなんてもう15年以上の付き合いになります。

汎用性のあるもの、販売が長く続いているものは、使い回し、補充の観点からとても心強いものです。道具選びの選択基準として参考になれば幸いです。

おーたさん

素麺だけで大変なことになってしまいました。
でも、さいとうさん、台所で肝心なものが二つ抜けていませんか。

さいとうさん

鋭い指摘です。
包丁とまな板ですね。

おーたさん

持たない選択も含め、色んな選択肢があるようです。
さいとうさんはどうしていますか。

さいとうさん

最近では両方とも持たない選択をする家庭もあると聞きます。ぼくも料理バサミで済ませてしまうことはあるのですが、料理に対してそれなりの取り組みをするのであればお持ちになった方がいいでしょう。
それでは包丁とまな板について語ります。

さいとうの語り:包丁とまな板について語ります

包丁は2本、まな板は2枚使っています。
包丁は刃渡り13cmの果物ナイフと同じく20cmの和包丁で、メイン使いは果物ナイフです。
まな板は22cm×22cmと30cm×18cmが中心で、昔買った45cm×24cmは滅多に出番がありません。全て木製です。

包丁のサイズとまな板のサイズには相互関係があると思います。バランスです。

どの程度の大きさの食材を切るのか、によってそれは決まってくるのだと思います。
和包丁と最大のまな板を使うのはせいぜい大根1本、キャベツ1玉を買った時くらいで、それも、両方とも半分に切ったらそれ以上は不要です。
キャベツの千切りは果物ナイフで切れるサイズにキャベツを小分けしてしまえばいいので、長い包丁を振り回す必要はありません。刃渡り13cmあれば大概用は済みます。

刃渡り13cmの果物ナイフと小さなまな板をメインにしている理由は他にもあります。

この包丁はもう25年近く使っていて、自分で研ぎます。包丁を研ぐのも一手間なので、和包丁はここぞというときにしか使いません。果物ナイフだけならば割とちょこちょこ研ぐことができます。木製のまな板を使うのは、刃の当たりが優しいからです。
お手入れ、の観点です。
切った食材を包丁の腹に乗せて運ぶことがあります。これには流石に不向きです。
でも、まな板ごと持って行ってしまえばいいので、この不利は相殺可能だと思います。

大きいまな板は、大きな食材も扱えるし、切った食材を乗せておくこともできるという利点はありますが、それなりの重量もあるので、持ち出して、洗って、乾かして、という手間を考えると使うのがそもそも億劫になってしまいます。
小さなまな板ならば、気構える必要もないし、洗うのも楽です。
使い勝手、の観点です。

その代わり、というわけでもないのですが、ぼくは小さめのボールを多用します。切る前の食材をあらかじめ作業台に並べ、切った食材を入れ、という具合に使います。多用しますが、この使い方なら油汚れもないので、水でさっと流せばいいだけです。

おーたさん

道具選びの基準についての考え方を聞くことができました。
そういえば、今回の『暮らしの道具展』で是非オススメしたいものがあるんですよ。
ambaiというブランドの土佐板。刃に優しい桧のまな板ながら、世界最薄の暑さ8mm。ここまで薄いと普通は歪んでくるのですが、四つ角に板を差し込む工夫でこの軽さ、薄さを維持しています。

さいとうさん

宣伝ですか。

おーたさん

いえいえいえいえ!本心です。ちなみに、暮らしの道具展は、7月31日土曜12時スタートです。

さいとうさん

しっかり宣伝しましたね。

おーたさん

この他にも色々と取り揃えていますので、楽しみにしてください。
IITOさん、家事問屋さん提供の非売品ノベルティもご用意してお待ちしております!

 

おしまい

タイトルイラスト:小林あつ子
https://atsukokobayashi.tumblr.com/

 

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