塩肉じゃが

 

こんにちは。岳中爽果のパートナーのはじめです。

もうすぐ5月です。爽果さんの個展です。
昨年に続き緊急事態宣言下での個展になってしまいましたが、今年は二日間お店での展示が叶いました。
入店される方は実物に触れて楽しんでください。
その後は昨年同様オンラインショップでお買い求めいただけるようなのでよろしくお願いします。

そんなわけで今回もレシピの更新です。
『はじめさんの料理帖』でのレシピ紹介は2018年から続いていて、きっかけは2017年5月の爽果さんの個展初日にレアチーズケーキを提供したことです。もう4年が経ちました。
4年経てば大学も卒業です。
先日ジョギングしていた時に、自転車に乗った母子の会話が耳に届いてきました。どうも将来何になりたいか男の子が語っていたようです。

子:俺な、高校6年になったらな、、、
母:高校は6年までないで。3年までや。
子:ほな、高校の次は?
母:大学。
子:大学の次は?
母:大人や。

「大人」か、と一人唸ってしまいました。
そんなわけで、趣佳さんでは僕ももう「大人」になってしまいました。
でもその時「社会人?」と思い浮かべた僕は「つまらない大人」なのかもしれないです。

2019年まではレシピのお料理を実際に食べていただく機会があったのですが、新型感染症の影響で昨年はレシピのみ更新、2021年もレシピだけの紹介になります。
レシピだけですが、「大人」として頑張りたいと思います。

皆さんにお料理を食べていただく機会がないのは少し残念なのですが、季節にとらわれずに幅広くレシピを紹介できるのは楽しいことです。
出来るだけ再現性の高いレシピにしたつもりなので、ぜひ一度作ってみてください。

ないものをねだるより、あるものを楽しみたいと思います。

 

塩肉じゃが

今回は、「塩肉じゃが」を紹介します。
塩味の肉じゃが、なのですが、塩豚の肉じゃが、と考えてもらった方が適当だと思います。

材料は豚バラスライス、じゃがいも、たまねぎ、にんにくだけです。
季節が間に合えば、新じゃがいもと新たまねぎで作ってみてください。
じゃがいもの種類はお好みで。男爵でもメークインでもキタアカリでもインカのめざめでもいけると思います。材料も料理方法もいたってシンプルですので、じゃがいもの違いを楽しんでもいいと思います。
今回はインカのめざめを使いました。爽果さんの飴色の器にも負けないくらいの色で、味もしっかり濃いです。

塩肉じゃが

塩肉じゃがは厚手の鍋の魅力を最大限に生かすものだと思います。少量の水分で具材を蒸し煮にするので、旨味がぎゅっと詰まっています。

この料理には3つのルーツがあって、その3つが僕の中で化学反応を起こしました。

僕は一時期「料理研究家研究家」を自認していたことがあって、同じ料理のレシピが料理研究家によってどう異なるのかを楽しく検証していました。
例えばポテトサラダ、肉じゃがなど、典型的な料理であるほど研究対象も多くて面白かったです。
今でも飲食店では、あれば必ずポテトサラダを頼んでしまいます。

できれば自分の中に一つ、これ、という味の基準となる料理を持っていて、そのレシピと比べるとどうかな、という風に見てみるといいと思います。
具体的には、塩の加減、甘みとのバランス、ハーブなどは何を使うのか、自分が使うのに使っていない材料、自分が使っていないのに使っている材料など、違いを分析することで、その料理研究家の傾向がくっきりと浮かび上がると思います。
そのうち、材料だけ見れば、その料理研究家のレシピを参考にすべきかどうか、分かるようになるかもしれません。

僕にとっては、肉じゃが、炒り鷄、ホワイトソース、トマトソースなんかがそういう位置付けの料理です。

そして、料理の手順自体についても、どうしてこの材料をこのタイミングでこんな風に使うのだろう、ということを考えていくと、他の料理に応用できることがあります。
料理の面白いところだと思います。

最近僕はレシピを見るときに、材料だけ見て自分なりの料理手順を考え、それから初めて料理手順を読むのを楽しみにしています。
とても勉強になります。

そんな風につながっていった3つのルーツです。

一つ目はもちろん塩豚です。
塩豚は一昔前にブームになりましたが、ブームとは関係なく優れた調理・保存方法です。
豚肉は塊りでも、スライスでも、どちらでもいいのですが、薄塩して一晩以上寝かせると味に奥行きが出ます。
昔我が家の料理会(家飲みの集まりなのですが、僕が料理を作る絶好の機会なので「料理会」と呼んでいます)で塩豚を食べた人が自分でも作ってみたのですが、塩が多過ぎて「豚味の塩」になってしまいました。スライスなら重量比1%、塊り肉でも2%程度を目安にしてください。
塊り肉なら日毎に熟成が進み、一週間は味の変化を楽しむことができます。
勤め人をしていた頃は随分とお世話になりました。

二つ目は平野由希子さんのル・クルーゼ料理「塩味の肉じゃが」です。
この料理の骨格となる料理で、僕のレシピでは水を加えないことと、30分程度で仕上げる点が大きく異なっています。

三つ目は通常の肉じゃがの料理方法です。
僕の肉じゃがは土井善晴さんのレシピを土台としていて、水もだしも加えず、厚手の鍋を使って日本酒だけで調理します。

平野由希子さんの「塩味の肉じゃが」を、しっかり一晩以上寝かせた塩豚を使って、土井善晴さんの肉じゃが風に作ったらどうなるのだろう、とレシピが発展していきました。
「塩味の肉じゃが」を初めて作ったのは2013年、このレシピにたどり着いたのが2016年なので、3年程の熟成期間を要したようです。
塩豚と同じように、熟成させるといい味が出てくるものです。

思い起こせば、この頃は随分と家に人を招いて料理を食べてもらっていました。
そんな風に鍛えられたレシピです。

ところで、肉じゃがには爽果さんのリムスープ鉢がよく合いますね。
リムの部分は僕が継いだものです。

塩肉じゃが

 

道具

・塩豚用バット(蓋つき)
・厚手の鍋 この分量だと、22cmル・クルーゼ(容量3.3リットル)が適当です。

 

材料

・豚バラスライス 200g程度
・塩豚用の塩 2g程度
・塩豚用のタイム

・じゃがいも 3個(400g程)
・たまねぎ 1個(300g程)
・オイル 大さじ1
・日本酒 100cc
・にんにく 1かけ
・ローリエ 1枚
・タイム 適当
・塩 5g程(じゃがいもと玉ねぎの重量比0.8%程度で加減)
・黒胡椒 適当

 

手順

1 )前日に塩豚を用意します。
豚バラスライスは長さを3等分にすると食べやすいと思います。
バットに、塩ー(豚バラ、塩、タイム)ー(豚バラ、塩、タイム)ー(豚バラ、塩、タイム)・・・と重ね、蓋をして冷蔵庫で寝かせます。蓋がなければ乾燥を防ぐためにラップでも。
2gの塩を厳密に按分するのは難しいので、目指す肉片に適当と思える分量の塩を、人差し指と親指の腹で擦るように振りかけていきます。ばらつきがあっても構いません。でも、決して「豚味の塩」にならないように。

2 ) じゃがいもはたわしで汚れを落とし、皮は剥かずに一つを8つに切ります。縦に2回、横に1回包丁を入れる感じです。4つだとちょっと大きいと思います。
僕はじゃがいもを水にさらすことはせず、そのまま使います。

3 ) たまねぎは繊維に沿って切ります。
まずは縦に4つ割りにして、その一つ一つをさらに縦に3つに切ります。
その時、山になった部分を2−3枚分剥がすといいですよ(『(特別編)台所の育て方ー「居場所としての台所」後編、「補論 たまねぎのむき方1」』参照)。

4 ) にんにくを潰します。皮は剥かず、底の硬い部分(盤茎と言うのですね)を切り落とし、縦二つに切ってから包丁の腹をあてて潰します。こうすると皮は勝手に剥けます。
以上で包丁とまな板の出番はおしまいです。洗って片付けましょう。

5 ) 鍋を弱めの中火で温め、オイルを注いで温まったら塩豚を重ならないように並べます。一度では並び切らないので、3回か4回に分けます。
表裏、赤い部分がなくなるまで火を通したら鍋の端に積み重ねていき、空いた部分で新しい塩豚に火を通していきます。
何度かに分けて焼くことに大した意味はないのですが、全部入れてぐちゃっと混ぜるのが美しくないと感じるのでこうしています。仕上がりの豚バラの姿には明らかに違いが出ます。
火が通ったら別のお皿に移していってもいいのですが、油汚れの洗い物を増やしたくない、という理由だけでこうしています。

6 ) 塩豚に全て火が通ったら、じゃがいもを加えて1分程炒め合わせます。

7 ) 続いてたまねぎを加えて1分程鍋の温度がしっかり上がるまで炒め合わせます。

8 ) 日本酒を加えて煮立たせます。料理酒は使わないでください。普通に飲める日本酒でお願いします。2リットルパック1,000円程度のもので十分です。僕は原料が米だけのお酒を使います。

9 ) にんにく、ローリエ、タイム、塩、下味の胡椒を加え、蓋をして弱火で20分から30分程蒸し煮にします。

10 ) 10分程したら蓋を取って上下を返します。もし水分量が少なければ(大丈夫だとは思いますが)、水を少量足します。

11 ) 20分程してじゃがいもに串がすっと通るようになれば出来上がりです。じゃがいもによって固さにばらつきがあるので、5分程は余裕を見てください。でも、全部で30分以上かかることはないと思います。

12 ) できれば火を落としてしばらく置くと味が染みます。温め直して食べてください。仕上げに黒胡椒を振りましょう。

13 ) こういうこともできる料理なので、僕は単車でツーリングに出かける前日に仕込むことが多いです。

 

 

つくれぽ

 

はじめさんの料理レシピは過去のブログを見たり、料理会で聞いた記憶から作ったことがあります。
今回は塩肉じゃがのレシピをそのまま再現してみる。との使命をうけ、若干緊張しながらの作業となりました。
普段、こんなにもレシピ通り忠実に料理をするというのがあまりないので….

まずは、レシピを一読。
なるほど…前日から仕込みがあるのですね。
前日という言葉に、ハードルの高さを覚えましたが、「塩豚を用意する」という作業自体は
数分で終了し、手間というほどではありません。それよりも困ったのが、タイムがない!

数軒スーパーを回りましたが、置いていない。田舎のスーパーでは難しいかな?乾燥のものでもいいのかな?
と悩んでいるときに、そういえば…と思いつき、ホームセンターに行きました。
予想通りに、タイムの苗を発見し無事入手しました。

【 店主よりひと言 】
レシピでは、タイムが乾燥か生かわからなかったのだけど、はじめさんだったら、タイムを栽培してそこから使っているかもしれないと想像して探したそうです。乾燥タイムだったらスーパーで売っていたということでした。
はじめさんに確認すると「乾燥タイムでいいですよ」とのことです。そして確かに昔タイムを育てていたことがあるそうです。

塩肉じゃが

塩豚が準備できたので、次の工程に。
ジャガイモや玉ねぎの切り方もレシピ通りにカット。
そして今回使用した日本酒は、八咫烏という奈良のお酒です。私はお酒が飲めないので、頂いた日本酒をお料理に使っているという感じで
今回はこのお酒になりました。

お鍋はSTAUBの26cmを使用。はじめさんが使っている鍋よりは大きかったのですが、塩豚に火を通していくときに2回ほどに分けただけで出来ました。
全ての材料が入ったら、蓋をして待つだけ。思っていたよりもここまでの工程はあっという間でした。

ジャガイモにすっと串が通ることを確認して。出来立てを味見しました。
「豚味の塩」になることを心配しすぎて、塩が少なかったかもしれないと思ったのですが、
火を止めて数時間後、頂くころには味が染みてちょうどいい塩梅になりました。

塩肉じゃが

塩肉じゃがは、味付けがシンプルなので素材そのものの旨みや甘さなどがしっかりと味わえるお料理だと感じました。
塩肉じゃがもおいしさに箸が進みますが、お酒と野菜から出た水分。塩豚の出汁からできたスープがこんなにおいしいとは!
我が家の新玉ねぎが収穫になるころ、また作ってみたいと思います。

塩肉じゃが

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