□  台所を育てる………………………………………………………………………

 

僕はごくごく主観的に台所を調え、そして育てています。
深夜に一人台所に腰掛け、ウィスキーソーダをすすりながら
配置換えを考えるのは至福の時間です。
滅多にしませんが、時折してしまいます。
宿命のようなものです。
新手のキッチンドランカーなのかもしれません。
いいアイデアが浮かんだときは大概飲みすぎて翌日が辛くなります。
でもその素晴らしいアイデアを忘れるほどではありません。
実現するのに手を動かすのがもどかしいです。
(ちなみにお伝えすると、すべからく模様替えの時、
僕は一人その場でお酒をすすりながら、ああでもないこうでもない、
と考えを巡らすのがとても好きです。
「居場所」としての空間、という意識が強いのかもしれません。
ウォークインクロゼットでもそんな具合です)

台所をどう育てるかは、食べること、
料理することに対するその人の姿勢を素直に現してしまうのではないかと
僕は考えています。
と言うことで、台所の育て方について考察するこの文章は
僕なりのとても主観的な姿勢に過ぎず、台所の育て方に関して正解はない、
と言うのが僕の見解です。誰かの参考になればいいなぁ、とは思いますが、
こうであらねばならぬ、とは全く思っていません。
検討にあたっての一つの要素として「居場所としての台所」という観点も
加えていただけると、少し違った角度から光が差すのでは、とは思っています。

 

 

□  台所の機能 ………………………………………………………………………

 

では考察を始めます。

台所に本質的に求められる機能は、料理をする場所、ということに尽きます。
分解すれば食材を水で洗い、包丁で切り、火で調理し、
盛り付け、食べ終えた食器を洗い、出たゴミを片付けるという行為を
如何に機能的に実現できるかということです。

このために必要なのは動線と作業スペースです。動線は当然ですが、
同じように重要なのが作業スペースを意識して確保しておくことです。

では作業スペースについて。
我が家では流し横のまな板などを使うスペースの他に、
くるっとふり返った場所に作業台を用意して、
台の上は常に何もない状態にしています。
空白であることが大切な役割なのです。器と同じです。老子も言っています。

「粘土をこねて、容器をつくる。その何もない空間に容器の有用性がある」

調理前の食材を置き、下ごしらえの済んだ食材を置き、
火口からおろした鍋を置き、盛りつけの際には食器を置く、
という使い方です。
こういうスペースを意識して用意しておくと、料理の段取りは格段に良くなります。
有名な料理研究家の受け売りですが、その通りだと思います。

生活全般に「余白」の大切さをもっと意識してもいいと思います。
多分「断捨離」も「ときめき」も同じことを語っているのだと思います。

 

はじめさんの料理帖

 

刃物類は目の前の棚に手ぬぐいを敷いて並べている。
手に取るときに怪我する可能性が小さい配置を考えた。

・メインに使うのは右から二番目のペティナイフ。
その左はフランスはオピネル社のナイフで、かつて登山の時に愛用した。
現在はテーブルナイフとして第二の生を送る。

・壁に立てかけているのはかまぼこ板で、
ちょっとしたものならこの上で切ってしまう。
正月ごとに交換するのに罪悪感がない。

・きのこ類はザルにのせていつでもここにいる。

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動線については、比較的シンプルで、食材を取り出し、
包装や容器から取り出し、洗い、切り、加熱し、盛りつけ、食器を洗い、
しまい、出たゴミを片付けるという台所の基本機能を忠実になぞればいいと思います。
ポイントは「忠実に」ということに尽きます。

動線が決まれば、機能毎に必要な道具を使いやすいように
配置していくことになりますが、配置の際のルールは

1)同じ機能のものは集約する

2)頻度に応じて分ける

で、両者のバランスの見極めにその人の個性が出るのではないかと思います。
鍋釜はコンロの近くにあった方が使いやすいですが、
持っているすべての鍋釜をコンロ側にそろえる必要があるかというと、
土鍋などはそんなに登場しないだろうし、一方で味噌汁用の小鍋は毎朝活躍する、
と料理の内容や料理する人によって使う頻度はまちまちなので、
あまり使わないものは遠くにあっても仕方ない、という割り切りも必要になります。

食器にしても、我が家はまとめて大皿に盛り付け、
食卓で各人が自分の小皿に取り分けて食べる、というスタイルなので、
大皿は流し近くに置いていますが、小皿はむしろ食卓に近い場所に置いています。

 

はじめさんの料理帖

 

流しの下。奥行き40cmの棚が1枚あるだけ。モノには全て定位置がある。

・棚の上には鍋が並ぶ。結婚する前からル・クルーゼは4つ持っていた。

・右の硬質パルプのボックスは、空き瓶、空き缶、ペットボトルが入る。
キャスター付きで便利。

・床上真ん中のワイン木箱には洗剤(セスキ炭酸ソーダ、酸素系漂白剤、
住宅用中性洗剤、漂白スプレー、アルコールスプレー)、
皿の油汚れや流しのごみ受けのゴミを拭い取るためのボロ布、
生ごみを入れる小さめの袋を入れている。
木箱の底には床が傷つかないように「カグスベール」を貼っている。
ワインの木箱を入手するために随分と無理してワインを飲んだことを思い出す。
僕はそれだけ台所が好きだったのだ。

・その左、野田ホーローの青いストッカーは生ゴミ入れ。
5リットルの指定ゴミ袋を入れ、料理中に出た生ごみを毎晩新聞紙に包んで入れる。

・さらにその左、もう一つのワイン木箱には出番の少ないすき焼き鍋、
たこ焼き機、ミンサーなどを収納する。

・布巾類は毎晩セスキ炭酸ソーダか酸素系漂白剤で煮洗いし、
画面左の折りたたみできる手ぬぐいかけにかけている
(元は買い物袋を引っ掛けてゴミ入れとして使うためのもの)

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この様に台所は使う人の使い方によって解が決まると思っているのですが、
ひとつ明確に導かれることとして、食材の保管(冷蔵庫以外)は台所の基本機能ではない、
ということです。

調味料は仕方ないですが、ストック用の食材を大量に台所に溜める必然性はなく、
これらのための場所の確保は劣後扱いでいいのではないかと思います。

我が家では、玄関近くの年間を通して比較的涼しい場所にストック食材置き場を作っています。

 

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今日はここまで。

明日は「席替え」「整理整頓」「エピローグ」で終わります。

2019年12月13日のブランダードの記事にでてきました

「玉ねぎの皮むき方」も掲載。

どうぞ、お楽しみに。

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