blueover、AROA

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– 目次 –

語りたくなるスニーカー(1)

語りたくなるスニーカー(2)

語りたくなるスニーカー(3)

語りたくなるスニーカー(4)

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岩金

工場の方とやり取りする上で、一番最初にガーンてショック受けたことってなんですか?

 

渡利

ショック受けたことは、やっぱり仕様と違うものを黙って納品されたことですかね。

 

岩金

ええええ!そんなことあるんですか?

 

渡利

仕様と違いますっていうと「うるさいねん!そんなんいうんやったらもうやらんぞ!」って言われたり…最初は泣き寝入りが多かったですね…

 

岩金

じゃあ売り物にならずに…

 

渡利

でも、それでは僕も食べて行くことはできないし…これでしゃーないかってなって…

 

岩金

それで納得してくれる人に買ってもらうっていう…

 

渡利

そうですね。あとね、返品もできないんですよ。工場もお金がないから。

 

太田

なのにそんな偉そうに?!

 

渡利

いや、僕もお金がないんですけど、工場もお金がない。みんなお金ない世界の中でやってて。僕自身も未熟やって、商いのやり方もわかってなくて、そんな中で厳しくて細かい指示をして、好意でやってくれてたんですけど、ある日「お前にやってることボランティアやで」って言われて

 

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原田

そこは今もつきあいありますね

 

渡利

そういう面もたくさんありました。
お願いしている仕事はまだ終わってないけど、お金先いれてくれって連絡あったり。材料はこっちで仕入れて渡してるから工賃だけなのに、それでも先に支払ってほしいって、どんだけ大変なの?!って。

 

原田

製造側も逼迫してる現状があるんですよね。

 

渡利

ソールも白いじゃないですか、でも届いたのが、白い部分が黒い粉で汚れていることがあって…

 

(一同笑い)

 

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渡利

こんなん納品したらだめでしょ!っていうたら、いやいやうちはこれしかできない…っていうんですよ。ソールっていうのは、横の部分を石でヤスるんですけど、ビジネスシューズとか紳士靴って黒でしょ。だから石が黒くなってるんですよ。普通はそれをちゃんときれいにして、石の黒いのを取ってから、白のソールの仕事にとりかかるんですけど、それをやってなかったっていう。だから、石でやすったとき、前に使用していた黒い粉が白いソールについったったんです。

 

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岩金

どういうところが発注してもそういう感じなんですかね?

 

渡利

やっぱりいろんな工場を渡り歩いて、いいところを見つけていくしかないですね。今お願いしているところは、ホント信頼できるとこですね。非常にきれいです。
革の工場も直接取引してるんですけど、不良品交換っていうことがないんです。革って原皮(げんぴ)というものがあって、皮を剥いで半裁してる状態。それを色指定して入れてドラムに入れてなめすんですけど、あがってきたものがちょっとちがっても、基本的には買い取らないといけない。そりゃしゃーないでしょが当たり前。

 

岩金

自然のもんやし。

 

渡利

そうですねぇ。こういうもんやしって。

 

岩金

ちょっとあの分からんでもないですね。うちも前回と同じものの発注したはずなのに完全に大きいなとか完全に重たくなってるなとか(笑)前回のあの形が良かってんけどなみたいなもありますけど、そういう話をしても「手でつくってるんでね」みたいな感じになるんですよね。うつわの場合は、それが味になったりしますし、お客様もそれがいいと思う方も多くいらっしゃいますし。そういうのがおもしろくて、わたしはやってるんですけど…。

 

岩金

えーっと、革屋さんに革用意してもらって、それを靴の工場さんに渡してガチャンとしてもらうっていう流れですかね。

 

渡利

工程の順番をいうと、革屋さんから革が届いて、靴のフリ屋さん(全体を取りまとめている方)に渡して、そっからフリ屋さんが抱えている裁断屋さんに渡って型抜きして、ミシン場でおもてとシンと縫い合わせて、上のアッパーっていう丸いとこをそれができたら、またフリ屋さんに戻ってきて、今度はソール屋さんに渡って…

 

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原田

細かい分業がいろいろあるんですよね。

 

岩金

それを全部コントロールされてるんですか?ディレクションというかひとつひとつ、間に入って?

 

渡利

一般的にはフリ屋さんが全部やってくれるんですけど、うちは全部自社で。うちがフリ屋さんって感じですね。そこがやっぱり他の製品と比べて組織だってないなって思います。鞄屋さんとかアパレルは、フリ屋とか問屋とかに言えば、物が上がってくる流れがあって、そういうのが靴が一番弱いように思えますね。参入してくる会社が少ないのも、そういうハードルの高さがネックになってるんじゃないかと。

 

太田

フリ屋さんに言えばでも、クレーム品の対処とかしてくれるんじゃないですか?

 

渡利

してくれ…ないですね。フリ屋さんの立場もそこまで強くないし 笑
ほんとに日本の工場をつかってスニーカーを作っているブランドは、本当に少ないと思います。blueover含めて数えるほどじゃないでしょうか。

 

太田

海外の工場でつくるっていうことは、考えられたことはあるんですか?
やっぱり国内が?

 

渡利

もう…ここまできたらね笑
実際、海外でつくるということに正直抵抗はないのが本音です。だけど、目的がなんなのかっていうとき僕は工場を継続することだと思っていて、これを続けることで、工場の年間の売上が維持できるとしたら、僕はやるべきやと思いますし、なんか印象だけで日本製っていうのを使っているっていうことはないですね。目的は日本の工場を維持させていくことなんで。

 

太田

それなのに、融通がきかない?笑

 

渡利

僕がいうのもおかしいですけど、仲良くしたい工場さんと仲良くしたくない工場さんがあります。廃業せず残っていく工場さんは自然に同じような想いがあったり、いいとこが多いですけどね。始めた当初は、ちょっとどうなん?っていうところに当たってましたけど。

 

原田

スタート時から今と一番変わったことってそこでしたね。考え方。

 

渡利

昔は「日本の工場のために」とか言っちゃってたんですけど、いざお願いしてみたら、救おうとしていたのが…めちゃ存在が大きくて。こんな小さい発注で自分たちが救えるなんておこがましくって、実際は我々が救われてるんですよね、こっちが。こんな発注も少ないのに、なにいうてんねんですよね。だけど今になって工場の規模が縮小してきて、こちらの発注は増えてきて、なんかちょうどよくなってきて、継続している意味が見えてきたんですよね。本来はがんばって大きくしていく方がいいんでしょうけど、小さいながら、ずーっと続けていけることがいいんかなぁって。

 

太田

一番最初の発注ってどんなもんだったんですか?

 

渡利

50足ですね。それで4色か5色のバリエーション、サイズバリエーションもあっての50足ですから、それぞれ1足ずつの在庫しか積めなかったり。それであーだこーだ工場の職人さんに細かい指示いうて「こんな発注数でよくそんなこと言えるな」って、今やったらわかりますけどね 笑

 

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原田

前職、会社でプロダクトデザインやってた頃は、大手企業を相手にしてたから「お願いしたことはやってくださいよ!」っておんなじテンションで工場の職人さんにぶつけたら、あれ?ってね 笑

 

渡利

なんでもかんでも先に持ち出しでお金もなかったし、経験もなかったし、右も左もわからなくて、当時はいろいろ撒き散らしてたね 笑

 

太田

開発期間的にはどんな感じですか

 

渡利

半年ぐらい。構想は長いですけどね。手を動かしてサンプル出しまでには毎回それぐらいですかね。

 

岩金

わたし、知人がスニーカーを販売してるんですけど、靴だけはやっちゃだめですよって笑 だからなんで靴つくらはったんかなぁって。今お話を聞いていても、やっぱり好きでないとできないですよね。好きやし、その工場の職人さんとのつながりやったりね。そういうことなんですよね。

 

渡利

好きなことは結構大きいですね。僕自身、靴やりはじめて1年後にバッグブランドを立ち上げたんです。鞄の方がええなってすぐ思うんですよ(笑) 靴を作り続けていくってほんとにたいへんで、在庫管理の面も含めて。ただ続けてきたからデータも溜まってきたし、やりやすくなっていくかなと。10年前は同業で同じ規模のブランドさんがいくつかあったんですけど、今は消えていってるし、残ってる自分たちが経験もデータもあって、続けていてよかったなぁと思いますね。

 

太田

わりと前向きなんですねー。僕はもっと、この在庫がなくなったら、辞めようとか…笑
そういう風に思うことはなかったんですか?

 

渡利

それはなかったですね。

 

 

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第2回はここまで。ものづくりの難しさ。特に靴は大変そうですね…。
次回は、オンラインで販売することの難しさ。大切に履いていくためには。
どうぞ、お楽しみに◎

 

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