食卓に、土のぬくもり。

学生の頃は、図画工作の成績は悪くなかったんですけど、何事も不器用な方で、自分から進んでなにかモノを作るということはほとんどなかったです。部活もサッカー部で、体育会系でした。

社会人になって、2年勤めたところで会社を退職して、そのあと、陶芸家の父の仕事を少し手伝う形で土に触れました。父の仕事をずっと見ていたからか、土に対しての違和感は感じず、すっと入ることができました。

あるとき陶器市にいく機会があって、いろんな作家のつくるうつわを見ていたんですけど、ちょうど自分と同じ年ぐらいの作家の作るものを見て、このままじゃいけないと思って、岡山県の備前焼の窯へ修行に出ました。修行期間は3年間でした。

無事に修行期間が過ぎ、実家のある和歌山へ戻りました。 和歌山で備前焼…というとなぜ?とよく聞かれるのですが、とくに深い理由があったわけではなく、自分の生まれ育った土地が好きだったし、父親がやっていた備前焼がやっぱりカッコよくで好きだったからです。設備等の問題も含めて、自分がモノヅクリに向かううえで、一番良い環境が地元であったということで、好きな備前焼を好きな場所で続けていくことができるのは、もちろん両親のおかげなので感謝しています。

備前焼は、釉薬を使わず、そのまま土を焼き締めるものですが、前々から釉薬や違う技法も気になっていて、まずは備前焼をきちんとできるようになってから…とずっと考えていたのですが、最近では、そんなこと言ってたらいつになるかわからないなって思うようになりまして(笑) 少しずつ違う技法でも自分の思うカッコよさを表現できたらと思っています。なので、今年は釉薬に挑戦しています。試行錯誤の連続ですが、やりがいも感じていて、2012年9月の個展でお披露目できたら…と思ってがんばっています。

陶芸自体、土や火、灰などの化学反応でできるものなんですが、そのやってみないとわからない、自分の経験則が重要になってくるという意味でも、やっぱり奥が深いし、まったく飽きませんね。

陶芸を始めた当初に比べて、今のほうが陶芸をずいぶんと好きになっています。

陶器でオブジェを作る作家もいますが、僕はうつわでも花器でも「いれもの」にこだわりたいと思っています。うつわを作っている時には、使っている様子を想像しながら作ることがほとんどなので、オブジェなんかは僕の生活からいうと残念ながらなかなか思いつきません(苦笑)

このうつわに刺身を乗せたらおいしそうだろうなぁとか、そういう風に想像して作りますが、僕自身、お酒が好きなので、やっぱり酒器を作ってる時が一番楽しいですね。僕のぐい呑みが他の作家より若干大きめなのは、お酒が好きだからです。そういうところはやっぱり自分の使い勝手や好みが出てしまいますね(笑)
僕はうつわを作るのみで、使っているところは見れません。でもたまに知人がこんな風に使ってるよーと、写メールを送ってくれるときがあって、それが僕のまったく想像しなかった料理が盛られていたりして、そういうときは「そうきたか!」といい刺激になります。

作家もののうつわを使うのに、料理が大変そう…と思う方もいらっしゃるようですが、忙しい時には、買ってきたお惣菜を乗せるだけでも、食べるときの気持ちが違うと思うので、あまり最初に気負いすぎずに気に入ったうつわを自由に使って欲しいですね。

作家が作るうつわは、確かにそんなに安いものじゃないんですが、それぞれに個性があるし、みんな違ったこだわりを持って作っています。同年代の人たちや僕より若い世代の人たちに、うつわを持つ楽しみが広がっていけばうれしいですね。その最初のひとつが、僕のうつわだったら、この上なくうれしいです。

過去に自分で作ったうつわを見ると、なんじゃこれ?と思うようなこともあるんですが、毎年毎年そんな風に思えるように、向上していきたいですね。これからも、いろんなことに挑戦しながらも自分の中のカッコいいうつわを追求していけたらと思います。もちろん僕のベースとなる備前焼も作り続けていくつもりです。

平岡仁

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